「青少年健全育成基本法の制定」を求める意見書への反対討論
JUGEMテーマ:共産党(日本共産党)
「青少年健全育成基本法の制定」を求める意見書について、日本共産党議員団を代表して反対の意見を述べます。
いま説明がありましたように、意見書は、青少年の荒廃は深刻な事態に直面しているとして、「青少年の健全な育成のための良好な家庭環境づくり」の原点に立ち返って「家庭の価値」を基本理念に据えた「青少年健全育成基本法」の制定を求めるものです。
この立法化は、2004年3月、当時の自民・公明の与党が参議院に「青少年健全育成基本法」を提出し、審議未了廃案となったものです。その後、2010年の参議院選挙自民党マニフェストでも制定を公約しており、法案の内容はほぼ変わらないものと考えられますので、2004年当時の日本弁護士連合の反対意見を参考にして、今回意見書への反対意見を数点申し述べます。
1、子どもの成長発達権・子どもの最善の利益を基本理念として明示すべきである。についてです。
「基本法案」は、我が国社会の発展に資する青少年育成を基本理念とし、子どもの成長発達を子どもの権利ではなく、国家社会の発展に寄与するものとして位置づけています。
一方で「基本法案」には、子どもの成長発達権や最善の利益確保についての言及が一切なく、他方、前文や第一条では、青少年の健全育成が「我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎」であるとされ、あたかも子どもの成長発達権よりも、国家社会の発展を優先するかのような内容になっています。
しかし、憲法上は、子どもも個人として尊重されるとともに教育を受け成長発達する権利を有し(憲法第13・16条)、子どもの権利条約では、子どもは単なる保護の客体ではなく、権利の主体であって、特に子どもは成長、発達する権利を有し、これを最大限確保するべく国家や社会は援助しなければならないとされています。
つまり、国家社会のために子どもがあるのではなく、子どもの権利保障のために国家社会が援助するのである。
むしろ国家社会の発展は、子どもの成長発達権が十分に保障された結果として得られるものである。
従って、あるべき基本法の基本理念は、国家社会の発展ではなく子どもの権利保障でなければならず、子どもの成長発達権と子どもの最善の利益を基本理念とする基本法こそが制定されるべきであります。
2、子どもの権利条約の重要原則を反映した修正をすべきである。について。
我が国は、1994年に子どもの権利条約を批准しており、国内法的効力を有しています。
子どもの権利条約第4条には、「「締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置、その他の措置を講ずる」と規定されており、同条約は、子どもに関わる権利について網羅的に規定するとともに、その基本原則を明らかにしたものであって、青少年育成に関する包括的基本法を制定するにあたって、同条約が反映されるべきは当然であり、子どもの権利条約の諸原則、子どもの成長発達権、子どもの最善の利益確保の原則、子どもの参加権、意見表明権の保障の他、一切の差別禁止、(第2条)、市民的権利の保障(第13条〜17条)等の重要原則を基本法に盛り込むべきであります。
3、子どもの権利を中心として、保護者、国民、事業者などの責務との関係を規定すべきである。についてです。
子どもの権利条約は、子どもの権利を中心として規定しているため、親などの保護者の責務と国との関係についても、大人は子どもの権利を実現するための援助者としての役割を負うこととされており、親などの保護者はその第一次的権限を有し、国は親などの保護者の権限行使を保障し、尊重するものとされています。
(第5条)すなわち、親などの保護者は、国との関係においては、一定限度の養育監護の自由が保障され、この自由は子どもの最善の利益尊重の原則によって制約調整が図られるという関係に立っているのです。
ところが、「基本法案」第5条は、保護者は「青少年を健全に育成すべき第一義的責任を有することを自覚し、その育成に努めなければならない」というのであり、「基本法案」を貫く「我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎」という基本理念と相まって、あたかもまず国家社会に対して親などの保護者が第一義的責任を負うかのように規定しているのです。
従って、「基本法案」第5条は、子どもの権利条約の観点から、親などの保護者の責任がまずは子どもに対するものであり、国はこれを保障し尊重する関係に立つことを明らかにする必要があります。
以上、時間の関係で、基本問題の3点だけについて反対意見を述べ反対討論とします。賢明な議員各位の賛同をよろしくお願い致します。
- 2014.04.13 Sunday
- 議会質問
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